交通事故の衝撃によって発症する「中心性脊髄損傷」は、四肢のしびれや筋力低下、巧緻運動障害など、日常生活に深刻な支障を残します。
しかし、画像所見が無いことも多く、事故との因果関係が問題になりやすいです。こうした時に重要な役割を果たすのが医師意見書です。
専門医が症状の原因や事故との因果関係を明確に解説することで、異議申し立てや裁判における証拠として強い影響力を持ちます。
本記事では、中心性脊髄損傷の医師意見書について、その内容・書式・取得方法から具体的な活用法まで詳しく解説しています。
最終更新日: 2025/10/27
Table of Contents
まずは基本から:中心性脊髄損傷と医師意見書を理解する
中心性脊髄損傷とは?その特徴と後遺症
中心性脊髄損傷は、頚椎の外傷により脊髄中央部が損傷して、上肢の運動麻痺や感覚異常(しびれなど)などの症状が強く出るのが特徴です。
中心性脊髄損傷の多くは、交通事故や転倒によって受傷して、MRI検査で脊髄の高信号変化が確認されます。
日常生活における手指の不自由などが残存しやすいため、後遺障害の対象となることが多く、適切な医学的立証が求められます。
<参考>
中心性脊髄損傷の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
医師意見書の役割と目的
医師意見書は、診断書では補えない後遺症の重症度や医学的因果関係を補足するための文書です。
MRI検査の画像所見、神経学的検査結果、臨床経過などを詳細に解説しているため、後遺障害認定や裁判の客観的証拠となります。
医師意見書作成で押さえるべき重要記載項目
中心性脊髄損傷に関する医師意見書には、主に以下のような内容が記載されるケースが多いです。
- 傷病名
- 治療経過
- 後遺症の種類や重症度
- 症状固定時期
- 画像検査の結果
- 事故と後遺症の因果関係
これら以外にも、中心性脊髄損傷の後遺障害認定基準を満たしていることを、医学論文なども引用して解説します。
診断書と医師意見書は何が違う?
診断書は、傷病名や治療内容を簡潔に示す文書であり、医学的証明の「事実記録」として扱われます。
一方、医師意見書は、後遺症の評価や事故との因果関係などを解説する医学的な根拠資料です。
そのため、後遺障害認定や異議申し立て、保険会社との示談交渉、そして裁判で使用されるケースが多いです。

なぜ中心性脊髄損傷では医師意見書が重要なのか
事故との因果関係を医学的に証明する
中心性脊髄損傷は、画像所見が軽度でも神経症状が重いことがあり、医師意見書では診療録も含めて総合的に評価します。
身体所見(反射、知覚、筋力)も加味して、事故との因果関係を医学的に解説することで、後遺障害に認定される確率を高めます。
後遺障害認定基準との整合性を示す
中心性脊髄損傷の後遺症は、残った症状の重さに応じて、後遺障害5級2号~12級13号に該当します。
医師意見書では、後遺障害認定基準に則って、麻痺の範囲や労働能力の制限を詳細に解説します。
特に、徒手筋力テストや感覚障害の範囲、画像検査の結果を整理することで、後遺症と後遺障害認定基準との整合性を示します。
異議申し立て・訴訟で強力な医学的証拠となる
後遺障害が非該当や想定より低い等級になった場合、医師意見書は異議申し立てや裁判において、再評価を求める根拠資料として重要です。
脊椎外科専門医が、詳細な画像所見や神経学的検査結果を添えて意見を述べることで、審査機関や裁判官は後遺症の実態を理解しやすくなります。
医師意見書が有効になる3つの活用シーン
異議申し立てで後遺障害認定の結果を覆す
中心性脊髄損傷の症状は、MRI検査の画像所見だけでは軽度に見える場合があり、初回審査では非該当となることもあります。
医師意見書では、損傷部位の画像所見に加えて、神経学的検査での運動麻痺・巧緻運動障害・感覚障害などの臨床症状を詳細に記載します。
異議申し立ての際には、医師意見書が新たな医学的根拠として、当方の主張を裏付ける資料となります。
保険会社との示談交渉を有利に導く
中心性脊髄損傷では、画像所見に乏しくても後遺症が大きいケースもあります。しかし、示談交渉ではエビデンスを提示する必要があります。
医師意見書で、各種検査と身体所見の一致、神経症状の一貫性、労働能力の低下を明示することで、保険会社との示談交渉を有利に進められます。
裁判や調停で客観的な医学的根拠として提出
裁判では、医学的資料が裁判官の判断の鍵を握ります。中心性脊髄損傷の医師意見書では、受傷機序・画像検査・治療経過を体系的にまとめます。
脊椎外科専門医による医師意見書は、裁判官が後遺症の重篤性を理解する助けとなり、損害賠償額の決定に直接影響するケースもあります。
効果的な医師意見書を手に入れるまでのガイド
依頼から受け取りまでのステップ
中心性脊髄損傷の医師意見書の取得は、まず相談書、診断書、画像検査、診療報酬明細などの必要資料を準備して、医療鑑定会社に依頼します。
見積金額の了承後、医師意見書の骨子案(検討項目)が提案されます。骨子案に問題が無ければ、約4週間で初稿(医師意見書案)が提出されます。
医師意見書案に問題が無ければ、費用を支払います。入金確認後に医師意見書の原本が発送される流れが一般的です。
作成依頼時に医師へ提供すべき資料一覧
中心性脊髄損傷の異議申し立てで使用する医師意見書の作成には、以下のような書類や資料が必要です。
- 相談書(依頼時にお渡しします)
- 画像検査
- 後遺障害診断書
- 診断書
- 診療報酬明細(レセプト)
- 損害確認報告書 / 事故現場実況見分調書 / 車の損傷写真 など
- 後遺障害等級結果連絡書
- 診療録(カルテ)
症状や治療経過、日常生活の支障程度が分かる資料が多いほど、医師意見書の信頼性が高まります。
医師意見書作成にかかる費用の相場
概要 | 価格 |
整形外科 | 23万円 |
脳神経外科、脳神経内科 | 29万円 |
耳鼻科、眼科、歯科など | 29万円 |
精神科 | 31万円 |
訴訟加算(整形外科) | 4万円 |
訴訟加算(その他の科) | 1万円 |
多部位加算(3部位以上) | 3万円/数 |
特急対応加算 | 2万円 |
難事案加算 | 6万円~ |
反論意見書 | -5万円 |
医師意見書の作成に必要な料金は、基本料金をベースとして以下の要素で変動します。
- 診療科目
- 訴訟事案
- 顧問契約の有無
- 弁護士特約の有無
- 納品時期
脊椎外科領域における一般的な事案では、20万円台の料金負担で脊椎外科専門医による医師意見書の作成が可能です。
弊社の医師意見書作成にかかる、加算や割引などの詳細は、こちらをご確認ください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
完成までに要する期間の目安
中心性脊髄損傷の医師意見書を取得するまでの期間は依頼内容によります。一般的には4週間ほどで初稿(医師意見書案)が納品されます。
医師意見書案への修正依頼に、脊椎外科専門医が対応するのにかかる期間は、1~2週間のケースが多いです。
中心性脊髄損傷の後遺障害認定で押さえるべき要点
中心性脊髄損傷が、適切な後遺障害等級に認定されるには、以下のような後遺障害認定基準をすべて満たす必要があります。
- 事故による受傷機序と症状に整合性がある
- 後遺症と各種検査が一致している
- 事故後から症状固定まで症状が続いている
シンプルに見えますが、すべてをクリアしている事案は少ないです。また、これら以外にも、たくさんの後遺障害認定基準が存在します。
医師意見書の価値は、後遺障害認定基準に足りていない要素を補強して、後遺障害の蓋然性を主張する点にあります。
この目的を達成するためには、医師意見書を受任する医療鑑定会社が、後遺障害認定基準を知り尽くしている必要があります。
中心性脊髄損傷が後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事で詳しく紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
中心性脊髄損傷の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
中心性脊髄損傷で専門家のサポートが必要な方へ
弁護士の方を支えるサービス内容
弊社では、交通事故で受傷した、中心性脊髄損傷の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
被害者の方への弁護士紹介サービス
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。

中心性脊髄損傷の医師意見書でよくある質問
画像上の異常が軽度でも神経症状が強い場合、後遺障害として認定される可能性はありますか?
中心性脊髄損傷では、MRI検査での画像所見が軽微でも、脊髄内の微細損傷によって、重度の上肢麻痺や巧緻運動障害が起こることがあります。
医師意見書では、神経学的検査や臨床経過などの画像検査以外の要素を詳細に解説することで、後遺障害認定の確率を高めます。
事故との因果関係をどのように説明すればよいですか?
受傷直後の意識清明・四肢麻痺発症という典型的な臨床像、画像所見、治療開始までの時間経過を合わせて記載します。
特に、事故によって新たに発症した根拠を整理して、「症状の発現時期」と「受傷機序の一致」を論理的に立証することが要点です。
既往の頚椎症や脊柱管狭窄症がある場合、事故による中心性脊髄損傷の悪化をどう評価しますか?
既往病変がある場合でも、事故を契機に麻痺や疼痛が出現・増悪した場合は「加重障害」として評価されます。
医師意見書では、事故前後の症状の比較、MRI所見の変化、神経症状の変化を客観的に示すことで、事故の影響度を解説します。
中心性脊髄損傷の後遺障害等級の目安はどのようになりますか?
中心性脊髄損傷は麻痺の程度により等級が決まります。上肢巧緻運動障害や軽度麻痺は12級と9級、日常動作に支障がある中等度麻痺は7級と5級が目安です。
中心性脊髄損傷の医師意見書作成時に注意すべきポイントは?
画像所見だけでなく、運動障害を数値化(徒手筋力検査など)して、事故からの一貫性を明示することが重要です。
さらに、医師意見書の文体は簡潔かつ専門的で、後遺症の永続性や事故との因果関係を、論理立てて記述する必要があります。
まとめ
中心性脊髄損傷は、頚椎の過伸展によって脊髄の中央部が損傷して上肢の麻痺やしびれを発症します。交通事故や転倒で起こることが多いです。
MRI検査で異常が軽く見えても症状が重い場合があり争いになりやすいです。事故との因果関係を医学的に証明するには、医師意見書が重要です。
医師意見書には、経過・画像検査・後遺症との関連などを詳述するため、後遺障害認定や異議申し立て、裁判などで有力な証拠となります。
中心性脊髄損傷の後遺障害認定でお困りであれば、こちらからお問い合わせください。初回の法律事務所様は無料で等級スクリーニングを承ります。
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