関節可動域制限は、日常生活や仕事に大きな影響を与えます。そして、交通事故のケガが原因で発症すると、後遺障害が認定されるためには、関節可動域制限の評価が重要です。
本記事では、関節可動域制限とは何か、その種類、制限が起こる原因、そして日常生活への影響について解説しています。
さらに、交通事故を取り扱う弁護士が知っておくべき後遺障害認定のポイントまで幅広くカバーしています。
最終更新日: 2024/10/23
Table of Contents
関節可動域制限とは
関節可動域制限の種類
関節可動域制限は、一般的に「拘縮」と「強直」の2つに大別されます。拘縮は、腱・靭帯・皮膚・筋組織などの軟部組織が原因で関節の可動域が制限される状態です。
一方、強直は骨や軟骨の変形や炎症によって関節が動かなくなる状態で、手術が必要になることもあります。
関節可動域の正常範囲とは
関節可動域とは、関節が動くときや運動を行うときの生理的な運動範囲や角度です。関節可動域は、どれだけ関節が動くのかを角度で表記します。
一例を挙げると、膝関節の屈曲は0-130°、足首の底屈は0-50°、背屈は0-20°、肘関節の屈曲は0-145°、手首の屈曲は0-90°、伸展は0-70°、足首の屈曲は0-45°、伸展は0-20°です。
関節可動域制限が起こる原因
関節可動域制限の原因は、痛み、皮膚の癒着、関節包の癒着、筋や腱の短縮、筋スパズム、関節包内運動の障害、腫張や浮腫、骨の衝突など多岐にわたります。
実臨床では、これらの要因が複合的に関与して、関節の可動域を制限するケースが多いです。
日常生活への影響
関節可動域制限により、日常生活の様々な動作が制限されます。例えば、肘関節の可動域が制限されると、顔を洗ったり、食事をするなどの基本的な動作が困難になります。
また、膝関節の可動域が制限されると、歩行や立ち上がり、階段昇降などが困難になります。
関節可動域の測定法
日本整形外科学会「関節可動域表示ならびに測定方法」が基準
関節可動域の測定法は、日本整形外科学会ならびに日本リハビリテーション医学会が提唱する方法が基準となっています。
上肢可動域の測定法
手指可動域の測定法
下肢可動域の測定法
※ 関節可動域表示ならびに測定法(2022年4月改訂)から転載
関節可動域の測定は主要運動の他動値で
自賠責保険の後遺障害認定基準では、関節の可動域を測るとき、①主要運動の ②他動運動での可動域測定値 が使われます。
①主要運動とは、各関節における日常動作にとって最も重要な動きのことを指します。例えば、肩関節の屈曲や外転、股関節の屈曲や伸展などが主要運動に該当します。
②他動運動の可動域測定値が採用される理由は、自動運動だと被害者が意図的に動かす可能性があるからです。
<参考>
【医師が解説】自動運動と他動運動の違いで後遺障害に差も|医療鑑定
関節可動域制限の評価(後遺障害認定)
後遺障害認定基準の概要
関節可動域制限が後遺障害として認定されるためには、いくつかの基準があります。まず、関節が完全に固まって動かない状態や、関節の機能が著しく低下している状態が、後遺障害に該当します。
具体的には、関節の可動域が健側の可動域角度と比べて2分の1以下や4分の3以下に制限されたケースで、後遺障害として認定される可能性があります。後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することが可能となります
8級(関節の用を廃したもの)
関節が全く動かせない状態を指します。例えば、関節の可動域が10%以下の場合や、人工関節を入れている部位の可動域が健全な部位の50%以下の場合が該当します。
10級(関節の機能に著しい障害を残すもの)
関節の機能が著しく障害されている状態です。例えば、肩、肘、手首など主要な関節の可動域が事故前の半分以下に制限されている場合が該当します。
12級(関節の機能に障害を残すもの)
肩、肘、手首などの上肢三大関節、または股関節、膝、足首などの下肢三大関節の可動域が正常範囲の4分の3以下に制限されている場合が該当します。
<参考>
【日経メディカル】関節可動域制限を治したい!その熱意が後遺障害評価で裏目に
【弁護士必見】関節可動域制限の後遺障害認定ポイント
後遺障害認定において、可動域制限は問題になりやすい要素です。弊社の年間1000事案を超える経験では、以下のような争点が後遺障害認定で問題になります。
- 器質的損傷が無ければ後遺障害に認定されない
- 症状固定時に可動域測定値が悪くなった事案への反論
- 自動運動による測定値の採用を主張する方法
これらの事案への対応法は、以下のコラムで御紹介しています。興味のある方は参照いただければ幸いです。
<参考>
【医師が解説】後遺障害の可動域測定とは?ポイントと注意点|医療鑑定
関節可動域制限の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、関節可動域制限の後遺障害認定を成功させるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
関節可動域制限の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
関節可動域制限でよくある質問
リハビリのアプローチ
関節可動域制限に対するリハビリのアプローチは、患者の可動域を改善し、日常生活の質を向上させることを目指しています。
具体的には、ストレッチング、筋力トレーニング、運動療法が含まれます。これらにより、関節の柔軟性が向上し、痛みや不快感が軽減されます。
手術による改善
関節可動域制限は、筋収縮、拘縮、強直などの要因によって引き起こされます。これらの要因により、関節の動きが制限され、日常生活や運動機能に影響を及ぼします。
手術による改善方法としては、股関節の人工股関節置換術(THA)が有名です。THA術後のリハビリテーションを通じて、痛みの軽減や機能の回復が期待できます。
まとめ
関節可動域制限とは、関節の動きが制限される状態で、主に「拘縮」と「強直」の2種類があります。拘縮は軟部組織の影響で関節が動きにくくなり、強直は骨や軟骨の変形や炎症が原因で関節が動かなくなる状態です。
関節可動域制限の原因は多岐にわたり、痛みや皮膚の癒着、筋肉の短縮などが主な要因です。測定法としては、日本整形外科学会の基準に準じた方法が用いられます。
後遺障害認定では、主要運動の他動可動域測定値が評価基準となります。関節可動域制限の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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