交通事故に遭った際に、痛みを和らげるための薬にはさまざまな種類があります。その中でも、ボルタレンとロキソニンは特に有名でしょう。
また、ロキソニンは医師の処方箋なしでも購入できるため、服用している人も多いです。しかし、ボルタレンやロキソニンを安易に飲んでも大丈夫なのでしょうか?
本記事は、ボルタレンとロキソニンの違いや服用する際の注意点について、整形外科専門医が説明しています。
最終更新日: 2024/5/11
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ボルタレンとロキソニンの違い
ボルタレンとロキソニンは成分が違う
ボルタレンとロキソニンは、異なる化学構造を持つ抗炎症薬です。これらは非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれ、炎症を抑えたり、熱を下げたり、痛みを和らげる効果があります。
ボルタレンはフェニル酢酸系に属し、一方、ロキソニンはプロピオン酸系に属します。化学構造が異なるので、効果や速効性が異なります。
ボルタレンとロキソニンが効くまでの時間
それぞれの薬が最高血中濃度に達するまでの時間は、ロキソニンの0.8時間に対して、ボルタレンは2.8時間です。このため、ロキソニンは、ボルタレンに比べて即効性が高いと言えます。
ボルタレンとロキソニンはどっちが強い?
それぞれの薬剤の添付文書上からは、ボルタレンとロキソニンのどちらが強いのかは明確に示されていません。
しかし、私たち整形外科医の経験則から言うと、ボルタレンの方がロキソニンよりも鎮痛効果が強い印象を受けます。
ボルタレンとロキソニンの効果時間
ボルタレンとロキソニンの半減期の違いはほとんどなく、持続時間はほぼ同じです。一方、私たち整形外科医の経験則では、ボルタレンの方がわずかに効果時間が長い印象を受けます。
ボルタレンとロキソニンの効果・効能
ボルタレンとロキソニンには、以下のような効果や効能があります。
- 痛みの緩和
- 炎症の緩和
- 解熱作用
- 手術後の痛みの緩和
痛みの緩和
頭痛、歯痛、生理痛、関節痛、筋肉痛などの痛みを和らげる効果があります。
腫れや炎症の緩和
骨折や捻挫などの外傷によって生じた腫れや炎症を緩和する効果があります。
解熱作用
カロナールなどのアセトアミノフェンほどではありませんが、ボルタレンやロキソニンにも発熱を抑える効果があります。
手術後の痛みや腫れの緩和
手術後の痛みや腫れを緩和する効果があります。
<参考>
【医師が解説】ロキソニンの効果は?何時間で切れる?|交通事故
ボルタレンとロキソニンの副作用
ボルタレンとロキソニンは非常に良く効くお薬ですが、長期間の使用や過剰摂取は健康に影響を与える可能性があります。長期間服用し続けると以下のような副作用を生じる可能性があります。
- 消化器症状
- 腎機能障害
- アレルギー反応
- 血液障害
消化器症状
胃の不快感、胃痛、口内炎、嘔気、嘔吐、食欲不振などの消化器症状が最も有名です。ボルタレンとロキソニンを比べると、ボルタレンの方が消化器症状を併発する頻度が高いです。
腎機能障害
ボルタレン、ロキソニンとも、シクロオキシゲナーゼ(COX)の抑制を通じて腎臓への血流を低下させます。このため、長期間の服用や過剰に服用していると、腎機能障害を併発する可能性があります。
アレルギー反応
頻度は高くありませんが、皮膚疹、かゆみ、呼吸困難などのアレルギー反応が起こることもあります。ごく稀に、Stevens−Johnson症候群という全身の皮膚や粘膜にびらんを発生する重篤な状態に至るケースもあります。
血液障害
稀に、溶血性貧血、血小板減少、白血球減少、再生不良性貧血などが併発する可能性があります。
ボルタレンやロキソニンは毎日飲んでも大丈夫?
持病の無い元気な人なら、1週間程度であればボルタレンやロキソニンの服用を続けても大丈夫な人が多い印象です。
一方、体質や体格によっては2~3日内服するだけで胃の不快感を訴える人も居ます。特にボルタレンでは消化管症状が多いので注意が必要でしょう。
むちうちではボルタレンやロキソニンを1週間服用しよう
交通事故で追突されても、当初は首の痛みがあまり無いケースは少なくありません。しかし、翌日には首の痛みが強くなる傾向にあります。
一方、ボルタレンやロキソニンなどの消炎鎮痛剤を受傷当日から服用し始めると、首の腫れや炎症を抑えられるため症状が重くなりにくいと言われています。
このため、受傷した当日は首の痛みがあまり無くても、できる限り医療機関を受診することが望ましいでしょう。
<参考>
【医師が解説】軽いむちうち症状でも病院受診するべき理由|交通事故
ボルタレンとロキソニンの使用上の注意点
ボルタレンとロキソニンを併用してはいけない
ボルタレン、ロキソニンとも、他の痛み止め(消炎鎮痛剤)との併用は避ける必要があります。
もちろん、ボルタレンとロキソニンを併用してはいけません。ボルタレンとロキソニンを併用すると、副作用が増悪する可能性があります。
過剰服用してはいけない
ボルタレンやロキソニンなどの消炎鎮痛剤は、ある一定量を越えても鎮痛作用が強くなりません。痛みが強い時にはたくさん服用したい気持ちは分かりますが、過剰に服用すると副作用の発生率が上がります。
妊娠中や授乳中には服用しない
分娩や胎児への影響が報告されているため、妊娠後期(28週以降)になるとボルタレンやロキソニンを服用できません。また授乳中も乳汁中に移行するため、ボルタレンやロキソニンなどの消炎鎮痛剤の服用は控えるべきでしょう。
ボルタレンとロキソニンのまとめ
ボルタレンとロキソニンは、異なる化学構造を持つ抗炎症薬です。ロキソニンは、ボルタレンと比べて効くまでの時間が早いと言えます。
一方、私たち整形外科医の経験則から言うと、ボルタレンの方がロキソニンよりも鎮痛効果が強い印象を受けます。また、ボルタレンの方がわずかに効果時間が長い印象を受けます。
ボルタレンとロキソニンは併用してはいけません。また、過剰服用や、妊娠中や授乳中には服用しないようにしましょう。
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