交通事故でケガを負った場合、病院や接骨院に毎日通院した方が良いのでしょうか? 結論から言うと、毎日通院しない方が良いです。
本記事は、年間1000例の交通事故事案を取り扱っている医療鑑定医師が、交通事故にあったら毎日通院しない方が良い理由を説明しています。
最終更新日: 2024/11/14
Table of Contents
毎日通院しない方が良い3つの理由|慰謝料の観点
慰謝料の観点から、毎日通院しない方が良い理由は以下の3点です。
- 慰謝料は通院頻度に比例しない
- 医師との関係性が悪化するリスク
- 示談交渉が難航するリスク
慰謝料は通院頻度に比例しない
慰謝料の自賠責基準
自賠責保険基準における慰謝料の基準は以下のとおりです。
- (治療期間 or 通院日数×2の少ない方)×4,300円/日
- 1ヶ月毎の通院日数の上限は15日
この基準を見ると分かりますが、上記②の条件のため1ヶ月間に15日を超えて通院しても、慰謝料増額にはつながりません。
慰謝料の観点からは、15日通院しても25日通院しても同じということになります。
慰謝料の裁判基準
慰謝料の相場は、自賠責保険基準と裁判基準で異なります。一般的に、裁判基準の方が高額の慰謝料です。
裁判基準の慰謝料は、治療期間が変動要素です。以下の表(金額は軽度むちうちのケース)のように、通院頻度は影響しません。
医師との関係性が悪化するリスク
医師は医療倫理に基づき治療を行います。このため、患者さんの要望による毎日の通院は、基本的に受け入れられない可能性が高いです。
患者さんが毎日通院することを要望すると、医師の立場では保険金詐取や詐病を想起します。
もちろん、交通事故被害者の早く治したいという気持ちは理解できます。しかし、医師は毎日通院しても治療効果を見込めないことを知っています。
このため慰謝料増額目的で、医師に毎日通院を要望することは厳として控えましょう。
示談交渉が難航するリスク
傷害分の慰謝料は、自賠責保険から120万円まで支払われ、それを超える金額は保険会社が支払います。
保険会社の立場では、120万円までなら自分の腹は痛まないです。しかし120万円を超えると、自社の支払いが発生してしまいます。
このため、毎日通院する等で医療費が膨れ上がっていると、示談交渉が難航する要因となります。
毎日通院しない方が良い2つの理由|後遺障害の観点
自賠責保険の後遺障害認定では、通院頻度が多い方が有利であることは間違いありません。しかし、毎日通院するのと3日に一度では、後遺障害に認定される可能性は変わりません。
むしろ、後遺障害認定の観点からも、以下の2点のために毎日通院しない方が良いと言えます。
- 過剰医療や詐病を疑われるリスク
- 治療費が早期に打ち切られるリスク
過剰医療や詐病を疑われるリスク
毎日通院するなどの過剰な診療は、保険会社に過剰医療や詐病を想起させる原因となります。
それでは、治療の観点ではどうでしょうか。医学的には毎日通院した方が良いというエビデンスは存在しません。
私は20年以上にわたって交通事故診療に携わってきましたが、毎日通院する必要性を感じた患者さんは1名も居ません。
治療費が早期に打ち切られるリスク
現実的な問題として、毎日通院していると治療費を早期に打ち切られる可能性が高まります。治療費を打ち切られた後は、自費で通院する必要があるので、非常に不利な状況に追い込まれます。
週3日が実臨床と自賠責保険のベストミックス
弊社ではこれまで数千例の交通事故事案に取り組んできましたが、後遺障害認定に毎日の通院は必要ないと判断しています。
治療の観点はどうでしょうか? 社内の10名以上の整形外科専門医の実臨床経験からも、毎日通院する必要性は無いと言い切れます。
これらを総合的に判断すると、週3日が実臨床と自賠責保険のベストミックスだと考えています。
整骨院(接骨院)では過剰通院に要注意
病院やクリニック(開業医)などの医療機関と比較して、整骨院は通院回数が顕著に多い印象を受けます。
施術と治療の違いはあるかもしれませんが、整骨院経営にとって交通事故患者さんは非常に旨味があることも無関係ではないでしょう。
整骨院の指示に従って毎日施術を受けた結果、施術費の総額が慰謝料を超えてしまった事案を散見します。
このような事態に陥らないためにも、もし整骨院に行くのであれば頻度について弁護士に相談することを強く推奨します。
<参考>
【日経メディカル】治療費の支払い打ち切りの背後に過剰医療も?!
まとめ
交通事故でケガを負った場合、病院や接骨院には毎日通院した方が良いという説があります。しかし実際には、毎日通院しない方が良いです。
毎日通院しない方が良い理由は、慰謝料の観点からは以下のとおりです。
- 慰謝料は通院頻度に比例しない
- 医師との関係性が悪化するリスク
- 示談交渉が難航するリスク
一方、後遺障害認定の観点からは、以下の2点のために毎日通院しない方が良いと言えます。
- 過剰医療や詐病を疑われるリスク
- 治療費が早期に打ち切られるリスク
整骨院に通院すると、毎日通院することを求められるかもしれませんが、得策ではありません。そのような場合には、弁護士に相談しましょう。
関連ページ
資料・サンプルを無料ダウンロード
以下のフォームに入力完了後、資料ダウンロード用ページに移動します。