最終更新日:2024/1/11
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公正証書遺言と遺言能力鑑定
最近、弊社では遺言能力についての鑑定依頼が増加しています。表立って遺言能力鑑定が可能であることをアピールしているわけではないのですが、年間で数百事案もの医学意見書を作成している国内トップクラスの実績から、ご依頼が増加しているものと推察しています。
遺言能力鑑定に関しては、交通事故や労災事故における医学意見書と若干様相が異なります。代表的な相違点は、交通事故と比較して限定的な医証しか存在しないことが多いこと、および医証以外の資料も参照しなければいけないことが挙げられます。
このように書くと難しそうな印象を受けるかもしれませんが、医学意見書作成にあたって最もハードルが高いのは画像や診療録などの医証を読み解く部分です。施設職員の記録などは専門性が低く平易なため、この部分が問題になることはありません。
むしろ、玉石混交(というよりもほとんどが石)の中から、しらみつぶしに探して有用な記載を探すという根気の要る作業が続きます。このようにして資料を紐解いて、遺言書作成時点での判断能力を鑑定します。
対応するのは精神科専門医もしくは脳神経外科専門医となります。精神科専門医にとって、交通事故で問題となるPTSDなどと比較すると、医学意見書作成のハードルそのものは高くありません。
神経心理学的検査(MMSEやHDS-R)、診療録、画像資料などをみると、多くの事案で遺言書作成時点での判断能力を推察できます。よくあるのは改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)で10点しかないのに公正証書遺言が作成されているケースです。
臨床的に言って、HDS-Rが10点しかない人に遺言能力があるとは到底思えないです。しかし、一見しただけでは認知症の存在がわかりにくい人は、決して稀ではありません。
むしろ、認知症の病期によっては饒舌になって頭の回転が速い人と勘違いされることさえあるため、本人と少ししか接触しない公証人には遺言能力が低下していることが分からないこともあります。
このようなケースであっても、当時の神経心理学的検査や画像検査があれば、客観的に遺言能力の有無を鑑定することが可能です。
また、あまりご依頼される機会はありませんが、本来であれば公正証書遺言を作成する段階で遺言能力鑑定を実施していれば、相続トラブルを未然に防止することができると思います。
世間一般では公正証書遺言が絶対視されていますが、遺言能力が無かったと判断されると公正証書遺言と言えども無効になるので注意が必要です。
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