周知のように、症状固定とは事故によって受傷した傷害が、治療やリハビリテーションを継続しても、これ以上症状の改善が見込めない状態になることを言います。
それでは、骨折などで手術を施行した場合の症状固定時期はどうでしょうか?症状固定となる代表的な時期は、術後6ヵ月と抜釘後だと思います。
主治医としては症状固定時期には興味が無いので、骨癒合を得て治療する必要がなくなった時点で症状固定を勧めるケースが多いです。
一方、被害者側にとっても、早期に症状固定して等級認定にもっていきたいところです。ダラダラと抜釘後まで待機するのはいかがなものかと思いがちです。
しかし、被害者側に立った時には、私は抜釘術後まで症状固定を待つべきだと思います。その理由は、画像上での関節症性変化が抜釘時期に出現する可能性があるからです。
特に荷重のかかる下肢関節内骨折では、受傷後6ヵ月と抜釘術後の時期を比較すると、明らかに抜釘術後の時期の方が、関節症性変化を認めることが多いです。
関節内骨折術後では、関節痛や可動域制限をきたしやすいですが、術後6ヵ月程度では画像上の所見を認めないことも多いです。ところが術後1年を過ぎた頃から、関節症性変化を散見するようになります。
被害者が自覚している症状に画像所見が追い付くイメージです。このため、抜釘術後の画像を根拠に症状が残存していることを主張することが容易になる傾向があります。
このような知識を念頭において、術後6ヵ月時点であまりはっきりとした所見の無い事案では、抜釘時期まで症状固定を待機することも検討してもよいかもしれません。
Table of Contents