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中心性頚髄損傷の考え方|交通事故の後遺障害

 

今週の交通事故関連の話題

 

中心性頚髄損傷は日常診療でよく見かけますが、後遺障害等級の現場ではトラブルの多い病態です。これは中心性頚髄損傷の「頚髄損傷」という病名が独り歩きして、いかにも重い後遺障害を残してもおかしくないという印象を審査側に与えることができるのではないか? という予想が働くからかもしれません。

中心性頚髄損傷は脊髄中心部の損傷です。 頚髄横断面での伝導路の局在部位が原因となって、下肢に比して上肢の麻痺が重度となります。このため、単に上肢がしびれるだけでも「 中心性頚髄損傷 」という診断名がついているケースを散見します。

中心性頚髄損傷でもMRIが診断に役立ちますが、通常の頚髄損傷と異なりMRIでは頚髄に所見が無いことがあります。そもそも中心性頚髄損傷の診断は、身体所見(神経症候)をメインにするべきであり、画像はあくまで補助診断に過ぎません。

それにもかかわらず、MRIで頚髄に信号変化を認めないため中心性頚髄損傷は存在しないという暴論や、別の理由で頚髄内に信号変化がある症例に対して「 中心性頚髄損傷 」であるという診断を下すことが後を絶ちません。

中心性頚髄損傷は画像的に診断されるべきものではなく、その神経症候で診断されるべきものなのです。一方、文献的にはMRIにおいて信号変化のない症例は麻痺が残存するような重篤な頚髄損傷に比しては経過が良いことが報告されていることも事実です。

結論としては、中心性頚髄損傷においても画像所見はあくまでも補助診断に過ぎず、最も重要なのは身体所見(神経症候)であり、その所見をもって診断や治療にあたるべきなのです。

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