Table of Contents
交通事故診療の実際
前回は交通事故診療における勤務医のスタンスを説明しました。医師が作成する診断書は自賠責の等級認定に対して大きな影響力があるものの、現場の医師の多くは交通事故診療に積極的ではないことがお分かりいただけたと思います。
それでは、もうひとつの医師の形態である開業医はどうのような状況でしょうか? 開業医は、勤務医と異なり自営業者です。このため、自分のおこなった診療がダイレクトに収入に直結します。
このため、勤務医のように単に業務内容のしんどさや、ややこしさだけでスタンスが変わるわけではありません。一般的な開業医の交通事故患者さんに対するスタンスは、勤務医よりは好意的です。
勤務医の場合には、いわゆるムチ打ちなどの軽症患者さんのの受け入れは良くないですが、開業医では比較的積極的に受け入れている施設が多いです。もちろん、これにも程度があり、受診態度の悪い患者さんはこの限りではありません。
おおむね、開業医は勤務医と比べて交通事故患者さんを熱心に診られている方が多い印象です。それでは開業医の方が良いということになりますが、後遺障害診断書作成段階でおかしなことになることがあります。
勤務医の場合には経済的な恩恵がほぼ皆無なので、機械的に後遺障害診断書を作成するだけです。しかし、開業医は下手に経済的な恩恵があるため、過剰な内容の後遺障害診断書となることがあります。
あまりに画像所見や事故態様とかけ離れた診断書になると、かえって信用性が毀損していまいます。熱心に患者さんに向き合うことが原因なので一概に否定できませんが、あまりに患者さんに肩入れし過ぎた内容ではかえって不利益を与えてしまいます。
このように、一般的には交通事故患者さんは開業医に通院するべきなのですが、開業医によっては過剰に忖度するケースがあるので、後遺障害診断書作成依頼の際には注意が必要だと思います。