そのSLAP損傷は本当に外傷性なのか?

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肩関節周囲の外傷では腱板損傷が最もメジャーです。腱板損傷を知らない整形外科医は皆無といってよいですが、SLAP損傷についてはどうでしょうか?

ときどき事故によるSLAP損傷という診断書をみかけることがあります。SLAP損傷とは、superior labrum anterior and posterior lesionの略です。上方関節唇(superior labrum)の前後(anterior and posterior)の損傷という訳の分からない傷病名です。

肩関節のスポーツ障害のひとつで、関節唇の上腕二頭筋腱起始部が剥離あるいは断裂する損傷です。もちろん外傷を契機に発症することがあるので、交通事故や労災事故の際に併発しても不思議ではありません。

しかし、一般的には野球による繰り返しの投球動作による慢性的な微小外傷が原因となります。このSALP損傷のやっかいなところは、一般の整形外科医が漠然としか理解していない点です。

このため、肩関節MRIの放射線科医師による読影で「SLAP損傷」という傷病名で返ってくると、そのまま転記してしまうことがあります。本来なら画像だけでは確実な診断が難しいにも関わらず、放射線科医師の読影結果にミスリードされてしまうのです。

実際のSLAP損傷において、身体所見が重要であることは論を俟ちません。しかし、SLAP損傷は整形外科医の間でもメジャーとは言い難い傷病であるため、交通事故現場に混乱をもたらします。

これは、一昔前の手関節のTFCC損傷でみた風景です。まだTFCC損傷が一般的ではなかった時代に、放射線科医師の「TFCC損傷」という読影結果にミスリードされた症例が多発しました。

最近でこそTFCC損傷ではこのようなことは見かけなくなりましたが、肩関節のSLAP損傷においては似たような状況が散発している印象を受けます。

一般的には手をついて転倒したようなエピソードがないとSLAP損傷は発生しません。このあたりを念頭において、診断書にあるSLAP損傷という傷病名が本当に正しいのかを確認する必要があります。

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